高齢者はビタミンC欠乏が重度

私が嘱託医をしている特別養護老人ホームは
80歳から90歳の方がほとんどです。
食も細くなってくるうえに、消化吸収力も落ちています。

点滴をしても血管がもろくて点滴の途中で
もれたり、注射の跡が紫色になって残りやすくなります。
血管の壁もコラーゲンからできています。
コラーゲンの材料はタンパク質、ビタミンC、鉄です。
高齢者の場合はビタミンC不足によることが多いです。

ひどい感染症を起こされ、点滴の抗生剤で解熱後に
口腔内出血や皮下出血といった出血傾向になった方
がいました。ビタミンC欠乏による「壊血病」です。

壊血病は大昔、ビタミンCという知識がなく、
長期間新鮮な野菜や果物を取ることができない
船に乗る人におこる謎の出血する病気でした。

その謎の病気がレモンで助かることがわかったことが
きっかけです。現在では通常の食生活ではここまでの
ことが起こらないのでほとんどみることがありません。

老人ホームでおこった壊血病は、
ビタミンC不足がベースにあり
重度の感染症で、食欲もおち、ビタミンCの消耗が
大きかったことによると思われます。
さいわい保険でとおっている範囲の
少量のビタミンC点滴で壊血病は治りましたが、
どこから出血してもおかしくない状態だったので
ほっとしています。

これだけビタミンCが不足しているのなら、
もっと診療で使いたいところですが、
保険診療では、ビタミンCを点滴で使うことは無理な状況です。
壊血病になれば使うことができます。
ビタミンCの不足が考えられても、不足による疾患にならなけば
使えないというのは矛盾することです。

ビタミンは食事をしていたら、満たしているという発想ですが、
臨床的にそのようなことはないとうのは
明らかです、とっても残念な方向に医療は向かってますね。

栄養療法医 くわじまやすこの即実践したくなる栄養療法

香川県出身。平成6年 大阪医科大学卒業後、徳島大学第一内科入局。 徳島県立中央病院にて研修、高松赤十字病院内科勤務、京都大学核医学科入局、大阪北逓信病院を経て、桑島内科医院 副院長を勤める。